93日目

今日も気がついたことはないですね。
ただハッキリとしたモテ効果はありませ
んが嫌な視線を向けられることはなくな
りました。
それだけでもラッキーかもしれません。
オナ猿の時は、たまに見透かされている
ような軽蔑の視線を感じることは何度か
ありましたから。
あれって割とダメージ大きいですよね。
だから逆に女の人から好意の視線を感じ
ると嬉しいものです。

最近感じることは顔つきが変わってき
た。肌の感じも健康的でいいし、これが
フェロモンが出ているってことなのか
な?知らんけど。

オナ禁で引き寄せてしまったことその2
です。

夏になるといつも家の近くの海岸へ行っ
て泳いだりしています。
海岸と言っても幅が狭く5メートルほど
しかなくてそれが海伝いにずっと続いて
います。
その日も自転車で海岸まで泳ぎに行きま
した。
一通り泳いだら岸に上がって音楽を聴き
ながら日光浴をしていたんです。
そこは場所がらあまり人は来ないところ
なんですが誰かがやってくるのが目の端
のほうで分かりました。
僕は海に向かって横になっていたので
その人が自分の背後を通り過ぎる形とな
ったんですが、反対側の目の端から現れ
る気配がないのです。
おかしいなと思っていたら「プシュウー
!」という音が聞こえたんです。
この音は自転車の空気が勢いよく抜ける
音です。
反射的に後ろを振り向くと、(この時初
めてその人間をはっきりと見たんです)
病院から逃げ出してきたような恰好で死
んだような眼をした痩せこけた青年が僕
の自転車の空気の栓を緩めていたんです
。そのあまりの異様さに怒ることすらで
きないで事の流れを見ていました。
前後の空気を抜き終えた青年はとことこ
とおぼつか無い足取りでまた歩いていき
ました。
振り向いた僕と目が合っていながら、不
思議なことに、一切の感情が感じられま
せんでした。完全にいかれている。
そのいかれた青年が自分から遠ざかって
いくのに安心して自転車の栓の部品がち
ゃんとあることを確認すると、また横に
なりました。
すると向こうの方で彼がこけて転んだん
です。
コンクリートのステージの大きな亀裂に
躓いたんだろう。
コンクリートじゃ痛そうだな。
でも助けてやろうとは少しも思いません
でした。
その後も僕は泳いだり休んだりを繰り返
していました。
どのくらいたっただろうか2時間くらい
かな、ふと彼のことが気になり顔を向け
たんです。
すると先ほどこけた状態のまま全く変わ
っていませんでした。
(死んだな)そう思ってあと少し音楽を
聴いたら帰ろうと決めました。
30分ほどして空気の抜けた自転車を押
しながら海岸を後にしました。
海岸から出る手前で後ろを振り返ると遠
くのほうに自転車の空気を抜いた奴の亡
骸がかすかに見えました。
死ぬ前にしたのが僕の自転車の空気を抜
いたことだったのか、そこに何の意味が
あるというのだと思いながら帰ろうとし
たその時足が微かに動くのが見えた。

(しぶといやっちゃな)